毎日新聞社説:元代表法廷発言 監督責任の軽視明らか

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社説:元代表法廷発言 監督責任の軽視明らか
2012年01月13日02時30分 毎日新聞

 注目された2日間の被告人質問が終了した。政治資金規正法違反(虚偽記載)に問われた民主党元代表小沢一郎被告だ。

 衆院議員、石川知裕被告ら元秘書3人は04年、資金管理団体陸山会」の土地購入をめぐり、元代表から提供された4億円などを政治資金収支報告書に記載しなかったとして昨年、東京地裁で有罪判決を言い渡され控訴した。元代表は収支報告書の虚偽記載への共謀を問われている。

 元代表は4億円の現金を陸山会に提供しただけでなく、当時秘書だった石川被告が同時期に同額の銀行融資を受けた際、書類に署名した。

 4億円もの銀行融資は本来、必要だったのか。指定弁護士は、 元代表提供の4億円を隠すための偽装工作だった とみる。元代表の認識はどうだったのか。いったい元代表は4億円もの金をどう用立てたのか。

 これまでも指摘されてきたさまざまな疑問が追及された。

 「何度も繰り返しますが」と、時にいらだつ様子も見せた元代表の発言を突き詰めるとこうなる。政治資金収支報告書作成は秘書への信頼に基づき、任せていた、ゆえに、報告など具体的な場面を追及されても「記憶にない」「分からない」

 収支報告書に至っては「見たことがない」とまで言い切った。

 また、関心が集まった4億円の出所については、これまでの説明をさらに変え、新たに「印税や議員報酬もあった」とした。

 元代表は昨年来、 「法廷で真実を述べる」と繰り返し、国会での説明を事実上棚上げしてきた。その結果が「秘書任せ」では、到底国民の納得は得られないだろう。

 そもそも元代表は、自らの巨額事務所費が問題になった代表当時の07年、率先して領収書の一部などを公表。それ以後、 「政治資金の収支をオープンにしているのは私だけ」などと強調してきた。収支報告書への関与を否定した法廷発言は、過去の発言の軽さを浮き彫りにした。

 法廷では、政治家としての秘書に対する監督責任や、4億円という巨額の金を現金で扱うことへの認識を裁判官が熱心に尋ねた。元代表はそのやりとりの中で、政治家になった当初から収支報告書の内容は把握していない とし、 「大多数の国会議員がそうだと思う」とまで述べた。

 どういう根拠なのだろう。他の国会議員はどう受け止めるのか。事実ならば、国民にも公開される政治資金に対する著しい責任感の欠如だ。

 刑事責任とは別に、やはりこの問題は国会での元代表の説明が必要だ。その上で、法改正などを通じ、政治資金に対する政治家の監督責任を明確にしなければならない。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20120113k0000m070118000c.html
http://megalodon.jp/2012-0116-0446-59/mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20120113k0000m070118000c.html